SMBCベンチャーキャピタルが投資先の事業成長に「ハマハブ!」を活用、その有用性とは?

共創マッチングプラットフォーム「ハマハブ!」では、全国のスタートアップと浜松地域の企業や市をつなぎ、地域課題の解決に向けた連携や協業を促しています。

SMBCベンチャーキャピタル株式会社は、投資先のバリューアップ手段としてハマハブ!を有効活用。この度、投資先であるITスタートアップの株式会社パズルリングと、地場企業である遠鉄グループの連携が実現しました。


どのような背景からハマハブ!を活用し、いかに効用を得たのでしょうか。投資先の成長支援を担当する、SMBCベンチャーキャピタル投資戦略部の山口俊也氏(以下、山口氏)に伺いました。

地方展開に欠かせない“信頼できる接点”としてのハマハブ!

――はじめに、SMBCベンチャーキャピタルの概要と特長についてお聞かせください。

山口氏: 当社は、SMBCグループのベンチャーキャピタルとして、スタートアップへの投資、投資先の成長支援などを行っています。中でも私が所属する投資戦略部のバリューアップチームは、既存投資先のバリューアップ、すなわち事業成長支援に特化した部隊です。

特徴的なのは、SMBCグループのネットワークを活用した幅広い支援メニューにより、投資先の企業価値向上をサポートしている点です。事業成⻑支援を例に挙げても、販路拡大やビジネス成長のための企業間マッチング、銀行取引先向けのスタートアップ協業提案、銀行協業でのピッチイベント開催、産官学連携推進など、投資先の規模やフェーズに合わせた最適なソリューションを提案可能。その中から生まれるビジネスマッチングは、年間300件以上に上ります。

私自身も、三井住友銀行の本部勤務とVC勤務を含め、スタートアップ向け投資・融資の資⾦調達支援からIPO支援、大企業とのアライアンスやオープンイノベーションの企画・推進まで、スタートアップに関する多岐にわたる業務に携わってきました。

 

――すでにさまざまな支援メニューをお持ちの貴社ですが、どのような経緯で「ハマハブ!」を活用することになったのでしょうか? 

山口氏:直接のきっかけは、ハマハブ!のリリース時に浜松市から情報をいただいたことです。全国のスタートアップと地場企業をつなぐプラットフォームとして関心を持ちました。

浜松市とはSMBCグループとして長年連携してきた背景があり、2019年に市の「ファンドサポート事業」が新設された際には当社も認定VCとして参画。交流を続けています。 

投資先の支援を考える上で、広い地域へユーザー基盤を広げたい場合には、地域の自治体や企業との連携が欠かせません。地域とつながる“質の高い接点”を日ごろから必要としている中、ハマハブ!を紹介いただき、「これは活用できる」と直感しました。

 

――比較的すぐに「活用できる」と感じたポイントは何でしたか?

 

山口氏掲載企業の課題が明確に掲載されており、投資先の事業成長にどうつながるかが見えやすかったことです。

 パズルリングではネット遺言サービス(※1)「lastmessage(ラストメッセージ)」を展開しており、現在は拡販フェーズを迎えています。他社とのライセンス契約を通じて営業網を広げるにあたり、地域に顧客基盤を持つ生活関連事業者と組むことを検討していました。

※ネット遺言…法的な効力は持ちません

 

今回の連携先である遠鉄グループは、鉄道業をはじめ小売、不動産、金融・保険といった事業を展開しています。消費者との多角的な接点をお持ちで、まさに理想的な相手先だったのです。

山口氏:また、「SNS・Web活用」、「保有データを使った新サービス提案」、「えんてつカード(※2)を活用したプロモーション」といったキーワードにも親和性を覚えました。

※2遠鉄グループ共通のポイント/クレジットカード

 

パズルリングの山村社長は、インターネット関連企業を上場に導いた経験を持つ連続起業家です。Web領域の知見と提案力を兼ね備えた経営者であり、「lastmessage以外にも多角的な連携が叶いそうだ」とイメージが湧きました
  • (キャプション)遠鉄グループ 掲載ページ(2025年11月14日現在)

事務局のヒアリング力により最適な共創の形が見つかる

――実際にハマハブ!を通し、連携が進むまでのプロセスはいかがでしたか。

山口氏:非常にスムーズで、初回のお引き合わせから半年経たずして正式な提携に至りました。それは、浜松市と事務局の担当者様が調整に入ってくださったことが要因です。遠鉄グループの中でももっともシナジーの高い事業部門とつながることができ、結果として、当初希望していたlastmessageのアライアンス契約が叶いました。

(キャプション)2025年10月16日に「lastmessage for entetsu」の提供がスタート。 引用:lastmessage for entetsu 専用サイト

山口氏:やり取りにおいて印象的だったのは、実務レベルのサポートです。引き合わせ前に複数回のヒアリングを通して、両社の課題感やリソースへの解像度を高めたうえでマッチングが行われました。

具体的なやり取りは事業者同士に任せる「掲示板型」のプラットフォームが多い中、ここまで実効的な支援は珍しく、付加価値を感じました。


――VCとして見たとき、ハマハブ!の有用性はどこにあると思いますか?

山口氏:地方自治体が主導しながらも、地域クローズドではない仕組みを実現している点でしょうか。自治体のスクリーニングにより信頼性が確保されつつ、全国のスタートアップが共創に申し込めることがユニークだと感じました。

また、繰り返しになりますが、浜松市のサポート体制には感銘を受けました。地場企業が持つ課題感とスタートアップの強み、両方の解像度が非常に高く、そのことが実効的なマッチングに直結していると思います。そうした実績から、現在、私も社内に向けハマハブ!の活用を勧めているところです。

有意義な共創のために大切なのは、スタートアップの“Will(意思)”

――実際の案件化を経て、どのようなスタートアップがハマハブ!を活用するのに適していると感じますか?

山口氏:地方創生・地域課題の解決に関心のあるスタートアップは、エントリーする価値があると思います。中でも、自治体との連携や仮説検証がまだ少ないシードやアーリーステージの企業にとっては、有益なチャンスが得られるのではないでしょうか。

 ひと言で「共創」といってもさまざまな方法がありますが、ハマハブ!ならではの事前のすり合わせを通して最適な連携の形が見つかると思います。

 

――最後に、ハマハブ!を活用するスタートアップが効果を最大化するために、必要な準備があれば教えてください。

山口氏:少し逆説的ですが、「あまり準備しすぎないこと」も大切かと思います。地場企業との協業においては、「自分たちの事業で何を成したいか」という強い“Will(意思)”を持っていることの方が、はるかに重要だと思うからです。

提案を完璧に仕上げることよりも、「どうすればこの課題が解決できるか」という仮説の検証に注力すること。壁に当たっても諦めず、別の方法や提案を模索しつづけること。そうした「スタートアップらしさ」を発揮していただくことが、有意義な共創につながると思いますし、それが可能な場としてハマハブ!に期待しています。